愉快犯 だって、貴方が微笑むから。俺はついそうしたくなるんです。 目を閉じれば鮮明に思い出せるほどに、ユーリの姿は記憶に刻まれていた。 眞魔国血盟城の自室で俺はただ座っているだけ。愛する人に会いに行こうか迷っているという微妙な感覚。 どうせ、今向かったところでユーリの自称婚約者であり俺の弟であるヴォルフラムに追い返されるだけだし。しかしユーリにあいたくて仕方がない。 さて、どうしたものか。 寝るにはまだ早く、一人で過ごすには長すぎる。何も考えずにいるだけで、ユーリのことをいつのまにか考えてしまう自分。 どうにかして、ユーリをここまで呼んでこれたならいいんだけど・・・ さぁ、どうしよう。 ひとまず夜更けの血盟城の冷たい廊下へ繰り出せば何かアイディアでもわくだろうか。とにかく、ヴォルフラムがいるのが悪い。陛下のベッドの上は俺の場所と決まっているのに!・・・じゃなくて、と。 変な方向に走りそうになる頭をどうにか動かして進むのはユーリの部屋のほう。音を立てないように注意深く歩けば空には青白い月が昇っていた。 ユーリ、今会いに行くよ。 心の中でそう呟きながらふける夏の夜更け。 「ぐぐぴぐぐぴぐぐぴ・・・」 その日、俺はひどく眠れなかった。目がさえてしまうというかなんだか微妙な気分というか。とにかく、ヴォルフがたてるいびきも手伝って今の俺は確実に不眠症という症状に見舞われている。 困ったなぁ。 そんな風に思いながらも、外は暗いし明かりは月明かりのみ。何もすることはないし、何がしたいという思いもない。 ただ、強いて言うなら、恋人に会いたいなんていう女々しいことを考えてしまったり。 「コンラッド・・・」 そう呟く。ああ、俺ってば何を考えているんだ〜!!!と頭をかきむしれば隣に寝ているヴォルフがうーん、と寝心地悪そうな声で不満を訴えてきた。俺は慌てて手を引っ込めると布団をけって何もかけないままただベッドの上で寝そべる。 「あーあ・・・どうしよう・・・。でも今から行っても寝てるだろうし」 何とはなしに呟いた言葉。まさか、返事が返ってくるなど予期せぬままに。 「俺に、会いたいんですか?」 囁くように、でもしっかりと耳に届く声で。 それはもちろん待ち望んだ恋人の声でもあった。だが、俺は暗い場所で、一緒にいる人は寝ているというのに自分の独り言に返事が返ってきたという状況にうわわ、と悲鳴をあげ、飛び起きる。 またまた、ヴォルフがうーん、と寝返りを打つ。俺は慌てて口をふさいだ。 「こ、ここここコンラッド!!どうして・・・?」 小さくいう。ここでヴォルフを起してしまったら明日は一日美少年の不機嫌に付き合わされることになる。 流石に骨が折れそうな仕事だ。 「いえ、貴方がお呼びだったので」 音を立てずにドアをすり抜けてコンラッドはベッドの前までやってきていった。呼んでなんかいないよと恥ずかしいので言い返すとコンラッドがクスリと笑う。 離れていても貴方の声は分かります、なんて。 そんな恥ずかしいこといわれたら、あんたの顔なんてまともに見えなくなるよ。 「すごく貴方に会いたかった。ユーリは・・・俺に会いたかった?」 月明かりでもはっきりと分かる笑顔。 恥ずかしくて最初は黙っていたけどやがて俺も口を開く。 「・・・っ、会いたかったよ・・・」 顔に体中の血が上って頭が破裂しちゃいそう。 そんな俺を見て満足そうな顔をしてコンラッドはベッドに座った俺を抱きしめた。そして、微笑んだまま視線を俺に絡めるとひどくまじめな顔をしてから、口付けられる。 ちゅっと小さい音を立てて触れた唇は熱くて優しい。 なんだか、嬉しくてコンラッドの背中に腕を回したらそのままベッドに倒されて。そして、耳元で呟くのだ。 「今夜は貴方と寝てもいいですか?」 寝るだけなら聞こえはいいが、もちろんコンラッドの手はパジャマのボタンに掛けられている。 「ヴォルフが起きるだろ・・・!!!」 隣に寝ている人がいたとしても、どうしても叫ぶしかなかった。 もちろん、貴方の声が聞こえたなんて嘘ですが、それでも俺を求めてくれていたことぐらい貴方の反応を見ればわかりますよ。 それでも、驚いたり微笑んだりする貴方の顔を見るのは大好きだからどうしても。これぐらい、許してくださいよ、ね? END 青空メアリー様への相互のお礼小説です。 ・・・次男当初腹黒のはずだったのですが・・・ごめんなさいまっくろくろすけになりませんでした・・・orzしかも、なんかエロネタ突入しているし・・・。 こ、こんなもので申し訳ないですっっ・・・(´д`;) 返品激しく可です、いつでもお申し付けください〜 |