都合だけは味方―2 コンラッドは、ユーリの体を心地よいシャワーで流し終わるとそっと湯船に座らせて、ざっと自分でシャワーをかぶる。 何もかも、自分も忘れてしまいたいな、そんなことまで考えた。だが、とにかく今はユーリを直して眞魔国に返さなくてはならない。 自分は、ユーリが記憶を取り戻すまでしか、手元で共に生活することは出来ない。メイドすらも部屋に立ち入らせないようにして、ユーリを隠し通さなくてはいけない。食事は、ほしいといえば部屋に持っていけるから何とかなるだろう。 あとは、ユーリの魔力のことが心配だ。このままでは、すぐに眞魔国にユーリがこっちの世界に来ているのがばれるだろう。急速に対処が必要だ、もしかしたらユーリを取り戻すために眞魔国が戦争を始めてしまうかもしれない。 大変なことで自分としてはなんとしてでも食い止めたいし、自分のせいで戦争が始まってしまったとユーリが知れば、悲しむに決まっている。ユーリはそういう魔王陛下だ。 だから、俺は誰からも、たとえ味方からだろうがユーリを隠し守っていかなくてはいけない。だけど、俺は・・・。 ユーリに唯一頼ってもらわなければならないのに・・・。 考え出すと止まらなかった。 でも、とにかくユーリを隠さなければならない。真実を告げるにはこのが大きすぎる。それなら、ユーリさえも騙してしまったほうが何もかもにおいて都合がいい。 だから、ユーリ、今だけは許して。 こんな状況で、矛盾したことを言って、かっこつけても貴方を傷つける俺を。 コンラッドは、シャワーの栓を閉めると湯船からユーリを抱き上げて風呂から出る。体を拭いてやってから自分の一人で寝るには大きすぎるベッドへ横たわらせた。自分も適当な身まきを羽織ると、ユーリが眠っているのを確認して城の武器庫へと向かう。 夜風は洗い晒しの髪にしみたが、そんなことよりも早く見つけなくてはならないものがある。 絶対ユーリに使いたいと思わないのだけども、一番これがすべてを解決してしまう。多分ユーリは、いやな思いをすると思う。だけど、ウルリーケが陛下を見つける前に。 夜の大シマロンはやけに静かでいやだった。窓の外には、大きな欠けた月。まだ上がったばかりなのか高さはなく赤い色をしている。 なんだか不吉な気分に陥りながらも、ユーリをこの手で守るためなら。 ユーリが悲しい思いをしても自分は守ることだけに専念しなくてはならないのだ。 やがてたどり着く、武器庫。守衛がいつもはいるのだが、今日は都合のいいことにいなかった。いたらいたで金でも持たせて見逃させるつもりだったけども。 そして、埃っぽいにおいがこもったじめじめした武器庫のドアを開けて必要なものを頂いてゆく。 コンラッドが手にしたのは銀色の輪の形をしたものだった。鍵穴がついていて、何かにはめるようになっているもの。 それは、対魔族用のものだ。 中には、法石が混ぜ込んであるのだ。使用用途は、捕虜の捕獲、拘束の際に用いる足輪。錘などついていない、少し強めのほう力が魔力を持つものの体に重くのしかかるということだけ。 これを使えば、魔力を封じ込めることだって出来る。 そう、ユーリにあの強すぎる魔力だって何とか抑えておくことができるのだ。 そうすれは、ウルリーケは見つけることが出来なくなるだろうし、ユーが暴走してしまったりということもない。そして、少し頭痛などを味あわせてしまうかもしれないが逃げ出したり勝手な行動をとろうとするのは何とかとめられるだろう。 こんなもの、ユーリにつけたくなかったが。 やむをえないのだ。 今の俺の脳にはこんなことしか思いつけない。一番力が強い物をつかむとコンラッドは足早にその場から帰っていった。 部屋に戻ると相変わらずユーリは布団をかぶったまま眠ってる。いつもだったら少し微笑むような寝顔をしていたのに、今は苦痛と恐怖に脅えたような顔をしている。 自分がこんな顔をさせているのだと思うとどうしようもない気分になる。 コンラッドは決心したようにため息をついてから、布団からユーリの左足を出すとそっとさっきもってきた足輪を取り付ける。かちゃりという音を立てて鍵を閉めれば銀色の輪は見事にユーリの細い足に固定される。 美しいとさえ思う、自分はどうかしている。 それから、ベッドの脇にあるの以外のろうそくを消すと薄暗い部屋を作り出す。 すべての作業が終わってから、コンラッドは部屋においてある酒をグラスに注ぐと一気に飲み干す。たたきつけるように、グラスを置くと大きなベッドのユーリの隣に滑り込む。 ユーリの体を抱きしめれば、いつもどおり日向のにおいがした。 ベッドに入ったまま最後のろうそくを消すと、月明かりだけの世界を作り出す。 いとしいユーリの体をめいっぱいの気持ちを篭めて優しく抱きながらコンラッドも目を閉じた。 END・・・? コンラッドが最悪の人です。あ、今回エロなかったですね。 原作からぶっ飛んだ内容だけど、パラレルじゃない、微妙。 |