貴方は雨で私は草で 何もかも失ったと思っていた俺に、希望という光を与えたのは貴方。 貴方がいなかったら、俺は生きることなんてできないほどに。それはまるで、干からびた地面で雨だけを待つ草のよう。 「コンラッドー!!」 無邪気な呼び声が響く。俺は、地球から持ち帰ってきた少し古ぼけたグローブとボールを持っていとしいわが陛下の元へと走る。 まぶしい光にとけ込んで、優しい笑みを浮かべるユーリに太陽は良く似合っていた。 「陛下!」 つられて俺も笑顔になってしまう。 「陛下って呼ぶなよ、名付け親!」 ユーリの声にすみませんと謝りながら俺はボールを投げる。そのボールをポスりと受け止めるとユーリはまたにこっと笑う。 何も変わらない日常、ただ貴方があっちの世界ではなくてここ眞魔国にいるというだけで幸せ。 向こうの世界だってユーリには必要だとわかっていても、ここでずっと一緒にいたいと思うのは俺のわがまま。いつまでも続くはずがないと分かっていても望む永遠。 戦うことしか能がないと自分は思っていた。だけども、貴方と共にいるから戦うことより貴方を守ることのほうが得意になりましたよ。 「ユーリっ!」 俺はどうしてもその細い身体を抱きしめたくなってユーリからまた帰ってきたボールを投げるとそのまま自分もユーリのほうへ走った。 ボールを目で追い、キャッチすることに専念していたユーリは突然俺が抱きしめたことに戸惑っている。 「コ、コンラッド!?何してんの!?」 そんな声に俺は笑いを隠せなくてそのままくすくすと笑うとユーリはなんだよ!と怒ったように唇を尖らせる。 理由なんてない、ただ貴方がそこにいるのを確かめたかっただけ。 「何って・・・貴方を抱きしめているのですよ?」 答えるとユーリは顔を赤くしていきなりそういうことすんな!と怒鳴る。 「こ、こんなとこ誰かに見られたらどうするんだよ・・・!」 俺たちは恋人同士で。 抱き合ったりするのは当たり前。 でもどうやらユーリはすごく恥ずかしいらしく人前では絶対そういうことをしたがらない。確かに魔王という立場上俺との恋愛なんかを公にできないのは確かだけどね。 「そしたらユーリは俺のものだって公表するまでです」 ユーリは一度ふうと息をつくと恥ずかしそうに、でも少しうれしそうな顔をして今だけだぞ、と視線を下にした。 それがかわいくて俺はユーリの顔をそっと上に向かせその唇に自分のそれを押し当てる。ユーリはびくりと体を震わせたが周りに誰もいないことは抱きしめたときから分かっていたからそのまま俺に体重を乗せてくる。 「・・・んっ・・・っ」 ただ触れ合わせるだけの子供じみたキスだけどユーリは顔を真っ赤にして睫を震わせていた。強く抱きしめるとユーリの手がそろそろと背中に合わせれるのが分かる。 舌を潜り込ませたい衝動に駆られたけどそんなことをしたらユーリに怒られるに違いない。この甘い唇に触れているだけでも満足できる。 「・・・っは!もう、キャッチボールできなくなるだろ!!」 俺が唇を離すとユーリは息を大きく吸い込んでから俺の身体を押しのける。 俺は少し名残惜しかったけど、そうですねといって抱きしめた拍子にユーリが落としてしまってころころと転がってたボールをつかむとまたキャッチボールを再開した。 俺の心が乾いたなら、また貴方の雨をください。 END 悲恋系ばかり書いているのでほのぼのしたくなったのです。幸せ感が出ていたら幸いです。 恋と愛の違いは下心があるかないかです(ぉ) |