キャンドルの灯― 2

キャンドルの灯― 2

 

 

上目遣いにコンラッドを見上げると頬に小さなきずだらけの指が添えられた。コンラッドの顔がどんどん近づいてきて・・・もう一度唇が重なり合う。

甘い息をふさいで、触れ合わせる唇は切なく視界をぼやかせる。すぐに離してやると、ユーリも目を少し潤ませて聞こえるくらいの声で息をしていた。

「ユーリ、こういうときは目を閉じるものですよ」

キスの間眼をあけたままでいたユーリに笑いながらいうと赤いままの顔で恥ずかしそうにごめんという。それすらも愛らしく顎に手をかけるとコンラッドはより深い口付けを落とした。

唇をそろりと舐められてびくりとした瞬間にコンラッドは薄く開いたユーリの口中に下を滑り込ませる。ユーリはとても驚いたようだったが、優しく舌をなぞられて眼をぎゅっと閉じるだけ。

舌を絡ませると、とても戸惑っていたが慣れてきたのかそれとも快感がほしいのかユーリは夢中でコンラッドと舌を絡ませあった。

「ん・・・っ」

息苦しそうになると、コンラッドは薄く口付けを解いて呼吸をさせてやる。それを繰り返しながら何度も角度を変えつつ貪りあう。

ろうそくがゆれるだけのこの部屋でかすかな息とぴちゃぴちゃとくぐもった音だけがみだらに響く。

ユーリが身じろぐたびにたつ布ずれの音も聞こえていたならユーリは恥ずかしそうにしただろうが今の彼の耳にはそんなものまったく届いていない。

ユーリの口からは飲み下せなくなったお互いの唾液が混ざりながらこぼれてゆく。

「っ・・・はっ・・・ん」

誰かとこんなキスを交わしたことさえ初めてのユーリはもう身体に力なんか入らなくて足が支えとしての役割を果たしていなかった。それに気づいたコンラッドは唇を離し、そのままユーリを抱き上げる。

「うわっ!ちょっ、コンラッド!?

あわてるユーリにコンラッドはいつもの笑みで頬にキスをするだけ。そのまま後ろにあった魔王用の天蓋付の大きなベッドまでユーリを運ぶと優しくそこに横たえた。

コンラッドもその上に重なるように乗るとユーリ、好きだよという。

「ユーリ、俺のこと好きですか?

ユーリを組み敷いたままコンラッドは尋ねた。

もちろん今までの反応を見てユーリがコンラッドを好きなのは間違いないのだがどうしてもユーリの口からそれを聞きたかったから。

「・・・っ・・・コンラッドォ・・・好き、好き・・・っ!

顔を真っ赤にして見上げる位置にいるコンラッドに言うと、コンラッドはユーリのことを強く抱きしめた。そして、耳元に顔を近づけるとよく言えました、と笑った。

そのまま熱いと息を混ぜた愛しているよという言葉を耳に直接送り込むとユーリの耳に舌を這わせる。

「っ・・・」

初めての感覚にユーリは声にならないような声。気持ちいいのだか、くすぐったいのか分からない感覚。

それでも、コンラッドは耳の中に舌を差し入れる。舌のざらりとした感覚がダイレクトに響いてユーリはびくりと身体を振るわせた。

気持ちいいですか?と問われ、ユーリは小さく頷くだけ。

その間にもコンラッドの指はユーリパジャマのボタンに掛けられていてプチプチと丁寧にはずしてゆく。

「すみません、俺もう・・・」

呟いた殊勝なことば。こんなときまでも優しい。

「っ・・・俺男だよ?女の子みたいに・・・きれいで、やわらかくないよ・・・?」

ユーリはコンラッドとそういうことをしたくないわけではない。思春期だし、性欲だってあるし。それでも、自分は男。コンラッドを満足させてあげられないかもしれない。

だが、コンラッドは微笑んで言うのだ。

「貴方は綺麗ですよ・・・ほかの誰よりも・・・。それに俺は貴方が貴方だから抱きたいと思う、ユーリだから好きなんです」

ユーリは黙ったまま顔を染め上げ後悔するなよ?と呟く。

うれしかった、そんな風に思っていてくれたなんて・・・ユーリは本気でそう思った。

コンラッドはそんなユーリの言葉にしませんよ、そんなことといって耳から唇を離すとなぞるように首筋を舐める。熱い舌の感覚にユーリはボタンがはずされていることにも気づかずぎゅっとシーツを握り締めた。

「ん・・・」

コンラッドの舌はだんだんと下方にずらされてゆき、あらわにされた胸へとたどり着く。胸の飾りにキスをすると小さく出した舌で軽く嬲る。ユーリは驚いて瞳を潤ませたが、コンラッドはそのまま口の端を持ち上げて笑う。

つぷり、と立ち上がったそれはユーリが息をするたびに上下し、苦しげで悩ましげ。そんな姿も、コンラッドの熱を高める材料には十分すぎた。

ユーリはもう何が起きているのか分からないような目でコンラッドを見ようとするが彼が時折立てるちゅっという音が妙にいやらしく直視することもままならない。でも、不思議と心地よくて気持ちよくそのままでもいいのかなとさえ思ってしまう。だって、男同士であっても好き合っているのは本当だしすきだったらこういうことをしてもいいと思うし。

でも、俺は男なんだよな、と最後の最後まで頭の片隅では男のプライドが残る。

その間にもコンラッドの細くて長い指がパジャマの上着を脱がそうとしているし、ついにはズボンにもかかりそうだった。

「あ・・・っ・・・コ、コンラッドぉ・・・」

コンラッドの唇はとても熱くて頭の中までも焦がすような気がする。ユーリは人生初となる行為にただただ身を任すだけ。

「ユーリ・・・」

コンラッドの声はひどく低かった。耳に残る心地の良い声。

「あ、やっっ!」

いきなりコンラッドはユーリのパジャマをズボンごと下ろすとその細い足から抜き取ってしまう。ユーリが急いで手を伸ばしたが脱がされている途中のズボンを捕まえることはできなかった。

コンラッドがクスリと笑う声が聞こえる。

「もうこんなにして・・・嬉しいな・・・」

コンラッドはそのまま手を伸ばすと少しだけぬれたユーリ自身をそっとなでる。

「ぅあっ!」

悲鳴にも似た声を上げてシーツをよりいっそう強くつかむ。目も眩むような刺激にユーリはぎゅっと瞳を閉じる。そのせいで今までにたまっていた涙が零れ落ちた。

コンラッドはそのユーリの頬に伝う涙をそっと舐めると軽くユーリ自身を握る。まだ少しやわらかかったそれはコンラッドが触れたことによって十分な硬さを帯びて。コンラッドは自分を感じてくれるユーリがとてもかわいくてたまらなかった。

「だ、駄目だって・・・ぅ・・・あっ」

扱くように扱われてユーリは声を漏らすだけ。コンラッドはそんなユーリの耳元に唇を寄せると愛していますと呟く。

わざと立てているのかコンラッドの手の中からは先走りでぬれぼそった自身をいじる音がくちゅくちゅと響く。ユーリはコンラッドに抱かれたままぼんやりと天井を見つめた。

強すぎる刺激から逃れようとして腰を動かしてもコンラッドの熱いたがしっかりと捕まえたままで、びくともしない。

「・・・ふ・・・ぁ」

声はやむことなく唇を突いてこぼれてくる。自分でもこんな声を出しているのが信じられないほど甘くて、ユーリは必死に口をふさごうとする。でもそれをやんわりとコンラッドに阻止されてかわいい声だから、聞かせてと耳に吹き込まれた。

その声にも感じてしまうほどどうしようもない状態になっていたコンラッドの言葉は恥かしくてしょうがなかったのに。

強く、そしてやわらかい刺激にユーリはただ黒い髪を振り乱しながらその快感をやり過ごそうとする。

もうユーリ自身はパタパタと先走りをこぼしていてシーツをかき混ぜるだけ。足はシーツの上をさまよい震える。その間にもコンラッドの容赦のない攻めが続き、ある一点に達したときユーリは金切り声のような声になっていないような悲鳴をあげて熱い蜜をほとばしらせた。

「っはぁ・・・コン・・・ラッドォ」

方で息をしながら達したばかりのユーリはけだるい身体で呼びかける。胸の上で青い魔石がころりと転がる。

 

 

                   To be continued