02
: 探しものをしているけれど、探しているものを忘れてしまった。 「あっれ〜?おかしいな・・・」 俺は乱雑に置かれた書類の上であわあわと探し物をしていた。 もちろん書類は下はきちんと角をそろえて並べられていたものばかりであったけども俺がかき回してしまったから今のかわいそうな状態になっているというわけだ。 「どこ行っちゃったんだよ〜!!」 書類はどかしては戻してどかしては戻して。いくら広いこの机でも限界があって、ついにそのときはやってきた。 「うわわわわわわ!!!」 ばさばさと舞い上がる書類。グウェンダルにでも見られたら絶対馬鹿にされるか鼻で笑われるに違いない。あわてて俺は書類たちを追い掛け回しながらひいひいと悲鳴をあげた。 恥ずかしいしどうしようもなくて。 書類たちに文句を言っても何も悪いことはしていないのだし、探し物は一向に出てこない。 せっかくギュンターが整えていてくれたものは大変なことになっている。 こんなことなら誰かに助けを求めておけばよかった・・・。 俺は魔王なんだから、書類のサインぐらい独りでできるよと閉じこもったのがまずかったか・・・。 だって、ギュンターにいつも迷惑を掛けっぱなしにしてしまっているから今日はどうしても誰の力も借りずにやってみたかったのだ。 そんなとき、突然扉が開いた。 書類集めに必死だった俺は、ノックの音に気づかなかったらしくとにかく突然ドアが開いのである。 こんなときに・・・! あわてて振り返ると、そこにいたのはやさしい笑みを口元にたたえたウェラー卿コンラートだった。 「なんだ、コンラッドか」 俺は安心してほっと胸をなでおろす。だってギュンターだったら慌てて書類片付けて、何度も俺に怪我はありませんかなんて聞くだろうし、ヴォルフだったら今日一日ユーリという名前の前にへなちょこをつけられるだろうし。 「なんだ、とは寂しいですね。俺じゃ不満でした?」 笑いながら言うコンラッドに俺は慌ててそんなことないよといった。コンラッドなら、こういう時黙って助けてくれるから。 「大丈夫ですか?」 慌てて書類を拾う俺にそう声をかけながら、彼も残りの書類を全部拾ってくれる。 ありがとうといって俺が受けとると、コンラッドは探し物をしていたのですか?とかき回された書類を見ていった。 「そうなんだよー、見つかんなくてさー」 そういって、すべて書類を元にあった場所へ戻し終えると違う場所を探そうと机についている引き出しを勢いよく開ける。それでも見つからない、どこへ行ってしまったのだろう。 窓の外は、快晴で外で遊んだらどんなに気持ちがいいだろう。せっかくここにコンラッドがいてくれるのだし、野球に誘いたいのに。 自分は探し物なんかにおわれているなんて、悲しすぎる。 「ユーリはいったい何を探しているんです?」 突然問われて俺はアレだよ、アレと適当な返事を返したが自分でもよく分からない。 「あれ・・・?俺何探してるんだっけ・・・」 どうやら忘れてしまったらしい。 「それは残念だ、ではどうします?」 こんなに長い時間をかけて探したのに、見つからない上に何を探していたか忘れてしまうなんて。なんて馬鹿なんだろうと思いながらも俺はコンラッドに笑顔で言った。 「いいよ、思い出せないし。それよりコンラッド、外でキャッチボールしない?」 俺の言葉にコンラッドはいいですね、と晴れ渡った空を見つめて笑ってくれた。 探し物は見つからなかったけど、あんたのその笑顔を見れただけうれしいよ。 END ユーリが大事な書類をなくしてグウェンにこっぴどく説教されるまであと三時間。 |