08
: 月日が過ぎて、物を知って、また少し、遠ざかる。 最初はいつも俺を頼ってくれていたのに、この世界を知れば知るほど貴方は何でもこなす。うれしくもありますが少し寂しいですよ、陛下。 「ユーリー、毒女アニシナ読んでー」 血盟城内に幼く愛らしい子供の声が響く。パタパタと小さい足音は必死にユーリを探しているようだ。 ユーリの養女、グレタの声だ。手には大きな本、毒々しく書かれたタイトルは毒女アニシナ。俺も前に全部読んだなぁなどと思っていると、ユーリが見つかったのか足音がやむ。 ユーリの部屋からだ。 来たころは文字だって読めなかったのに、いまや養女に本を読んであげることだってできる。確かにたまに文法がおかしいこともあるけどもきちんと解読できていることがほとんどだ。 たまにまだ分からなかったとき、俺にきくこともあるけどもだけど対外はこなしている。確かに娘の前ではいい顔したいのか強がっているときもあるけども。 俺としては、大変さびしい。 「えーっと・・・そのときアニシナは・・・ん・・・?」 ユーリの部屋の前を通り過ぎようとしたとき、つかえている声が聞こえる。 ああ、分からないところがあったんだと思わず俺は顔をほころばせてしまう。主君の成長は祝うべきところなのに。 まったく、駄目な従者だな・・・ そんなことを思いつつももうすぐユーリは俺を探しにきてくれるのだから。今はまだまだそれで満足ではないか。 俺は上機嫌で通りすがりの振りをするだけ。 ほら、ドアが開く。 「コンラッド、あ、ちょうどいいところにいた!読めないところがあってさぁ・・・ここのところなんだけど・・・」 「ああ、これですか・・・」 そうやって、ずっと俺を頼っていてほしいのです。 俺だけを頼ってほしいのです。 いつまでも・・・。 END 人に頼られるのは大変気持ちがいいですよね。それが好きな子ならなおさら。 |