09 : 「探しものは、見つかりましたか?」

09 : 「探しものは、見つかりましたか?」

 

 

歩き出すと、自分は正解に近づいているのか不安になる。

一体どこにあるのか分からないから、ただがむしゃらに探し回るしかないんだ。

 

 

海の上は、限られたスペースである。だから、探し物など簡単に見つかるはずなんだ。

でも、俺は俺のことを大事に守ってくれるお庭番の目を盗んでまでこの船の中を捜し歩いている。

ごめんな、と心の中で謝りはするが戻ろうとは思わない。だって、どうしても見つけたいんだから。

波が安定しているため傾くことも知らないこの船は、まるで地上に建つ建物となんら変わらないようにさえ思える。だけど、紛れもない海の上で逃げ場などまったくないここ。

呆然と歩きながら窓の外を見ると申し分なく青い空がはるかかなたで水面と混ざり合っている。ため息をつきながら俺は、脚を進めるだけ。

しかし、どこにも見つからなかった。

いまさら探している俺もおかしいのだけども、それでもやはり安心できるのだ。同時に悲しくなることは間違いないけども。

サラの部屋も訪ねてみたが誰もいなかったし、デッキにはヨザックが座り込んで波を見たり船の人と話をしていたので行くわけには行かない。ヨザックに頼むわけには・・・いかないんだ。多分とめられる、というか絶対止められるから。

探し物は、不安で不安で仕方がない。探す葉所が限られているならなおさらだ。もうずいぶん探し回っているけど見つからない。

期待まみれのこの手のひらでドアを一つ一つ開けて回りながら、見つからないたびに落胆する。

でも、見つかったときを想像するだけで体は次の場所へと出向いているのだ。また悲しくなるに決まっているのに。

そろそろ、うちのお庭番が心配しだすころかもしれない。戻ったほうがいいかもしれない。

俺がそう思いながら最後のドアを開ける。

ここだったらいいのにと思ったけど現実は甘くない、その部屋の中ももぬけの殻。

だが、そんな時、背後から声が響いた。

 

「探しものは、見つかりましたか?」

 

待ち焦がれた声。優しい笑顔。

探し物?ああ、見つかったよ、ちゃんとね。

たった今、この場所で。

 

 

END

 

 

それでも、あんたを探していたとはいえないんですよ。