心の病とでも云うのか。周期ごとに訪れる拒食症状。
なにもいらない。食べたくない。
「じゃぁ何か作ってあげます」
私室で何気なく話していたら、フツーに言われた。
可笑しな話である。武人の彼が、自分のために厨房に入って料理をするなんて。
それにまず本当に料理が出来るのかも疑問だ。
一応爵位も持つ高貴な人だから、厨房に入ったこともあるかどうか。怪しいな。
「…別にそこまでしてもらわなくていいから」
当たり障りのない返答をする。
「No problem.What'd you have?」
しかし彼も引いてくれないらしい。相変わらず変なところで頑固だ。
だからこそ、ちょっと意地悪したくなる。
「Do you have a shellfish and rice casserole?」
「Aaa-,sure..maybe.」 
「maybe !?」
「oh,sorry.perhaps my dear」
「…ホント大丈夫なのかよ?」
「ええ、たぶん?」
「…」
胡散臭い笑顔と共に扉のほうへ消えてゆく彼。本当に大丈夫なのだろうか。
逃げ出そうと思ったが、あまり怒らせると後が怖いので素直に待つことにした。




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「お待たせしました」
「Just think how tedious waiting is…」
「すいません」
「心にもないことを」
「あ、ばれました?」
「……」
「まあそれはさて置き」
どこに置けばいいんだ。とか、反論しようかと思ったが、
自分の目の前に湯気だっている容器を置かれたので黙ることにする。
「知ってたんだ、ドリア」
言外に、知ってるとは思わなかったといういうことを滲ませる。
だって少し意地悪しようと思い、あえて地球の料理を言ったのだ。
まさか本当に作ってくるなんて思わなかった。
「いえ、あんまり」
「あまり?!あまり知らないのに作ったのかよ??」
「ええまあともかく、容器に気をつけて召し上がれ。あッ俺が食べさせてもいいけど」
「自分で食べれるから結構です」
「そう、残念」
スプーンで掬うと、クリームソースとライスが出てくる。見目は完璧だ。
口に運ぶ。思ったほど熱くない中身。しかし味は完璧ドリア。すごい。
彼は何でもそつなくこなす部類の人種らしい。羨ましい限りだ。
「美味しいでしょう?」
「うん。美味しい」
「よかった」
1口、1口、口に運ぶ。行儀悪く人が食事中のテーブルの横に腰を下ろし、
いつもの笑顔でこちらを覗き見ている彼の器用さを噛み締めながら。
「……ぃッたー」
「おや?」
残り半分もないというところで、ふとした拍子に親指と容器が触れ合ってしまった。
食べている中身の熱さからはありえないほど熱を持っている容器。
油断した。低温火傷。
「あぁ、だから言ったでしょう『容器に気をつけて…』って」
「詐欺だ!」
「失礼な」
触れ合ったのだろう所が、見る見るうちに赤くなった。
すぐ手は引っ込めたはずなのに。ものすごく痛い。
少し泣きそうになっていると、火傷した手の方の手首を掴まれ、
バンサイするように手をあげさせられた。どうやら間近で見たかったようだ。
じっと観察するように見ている。
「あぁやはり綺麗だ。白には赤が映えますね」
「おい、俺の心配は?!俺は痛い」
「大げさな、これぐらい大丈夫ですよ。うん、綺麗」
飽きもせず、じっと火傷を見つめている彼。なんだこの異様な執着心。
「……確信犯?」
「やだな、そんなことないですよ?」
否定はされたが、どうやら彼がこれを狙っていたらしいことは一目瞭然だ。
見上げた顔に満足そうな笑みが浮かべていることからも充分伺えられる。
「…サイテー」
「ヒドイなぁ。自分の過失じゃないですか」
「そうだけど、」
「ね、それに小さくて真っ赤な果実みたいで、似合ってますよ」
「嬉しくないな」
ぶすくれて俯く俺。くすくすと彼の笑い声が聞こえる。本当サイテーだ。
彼に掴まれている手首を、下ろそうと力を加える。が、彼も力を入れたらしく、びくともしない。
その事実に、より彼の笑い声が大きくなる。
「ははっ、すいません、機嫌直して?」
「ヤダ!」
顔を覗き込むように見てくる彼に、俺はさらに俯く。
「・・参ったなぁ」
ふいに火傷した部分が痺れる。思わず顔をあげると苦笑しながら火傷した部分に
キスを落としている彼が。
「ね?機嫌直して?」
再度聞かれる問いに、俺は無言を返す。






Burned my fingers 。。




END


青空メアリー様からいただいた相互記念小説です!!
すっごくうれしいです、料理ができる次男にひどく萌えさせていただきましたよ!(笑)
私のお渡ししたものがひどくへなちょこでつりあってないっっ!!
とにかく、本当にありがとうございます!!!(*´∀`*)