10 : 目が覚めても居ないなら、夢でなんて逢いたく無い

10 : 目が覚めても居ないなら、夢でなんて逢いたく無い。

 

 

「コンラッド、俺のこと好き?」

無邪気な笑みで貴方は俺に話しかけてくる。これは夢なんだと分かっていても抱きしめて好きだよと囁いてしまう。

こんな夢など見たくないのに、おきたら悲しくなるだけなのに。

それでも続くのは甘い甘いこの狂った夢。

 

 

口付けは、いつもどおり甘い。リアルで、幸せで、俺が待ち望んだとおりの夢。

やがて訪れると分かっている夜明けの存在が、俺はひどく耐えられなかった。頭で理解している夢など悲しくてたまらなかったから。

ユーリの細い体を抱き寄せてみれば、甘い香りがほのかに漂う。

ベッドに押し倒して、黒い服を脱がしてしまえば白くてやわらかいからだ。何度抱きしめて愛しているといったかわからない貴方は、いつもどおり恥ずかしそうに微笑む。

夢の中のレプリカである貴方は、何も変わりなく貴方を演じ続ける。俺も、違和感なく溶け込んでしまう。

「コンラッド・・・」

呼び声も変わらず耳に心地よい。このまま一緒にどこまでも堕ちてしまいたいと誘う俺の理性。これは夢なんだから、気にせず堕ちてしまったらどうなのか、と。

俺は無心にユーリを抱きしめる。

泣いてしまい衝動と、貴方を抱いて体だけは満足させてしまうかという逃げが俺を襲い続ける。

周りの景色も見れぬほど、俺はただユーリをいとおしく見つめ、ユーリのことだけを考える。そのたびに夢の中のユーリは現実に近づいてゆく。

望めば望むだけ笑ってくれて、愛せば愛すだけ俺を愛してくれる。貴方は、確かにそんな形をしていますが、貴方ではないことぐらいすぐに見抜けるんです。

「・・・どうしたの?」

抱きしめたまま動こうとしない俺を不思議そうな顔をしながら覗き込んでくる。漆黒の瞳は心配そうに揺れて、きらきらしていた。ユーリの象徴ともいえるその姿に俺はまだ動くことはできずに抱く力に力をこめる。

「少しだけ・・・こうさせて」

呟くとユーリは安心したように俺の背中に手を回して抱きしめてくれた。愛する人と、なんら変わらない動作。

依然続く夢の中で、俺はユーリを抱くことができるのか。

・・・きっと抱いてしまうのだろう。そして明日の朝、強い強い後悔をするんだ。そんなこと分かりきっている。

自分の性格なんてそんなもんなのだから。

それでも、夢の中の貴方に向かって愛していると囁けない俺は大事成長したんだと思いたい。

ユーリ、愛しています。この言葉は、現実のまぶしい貴方だけに。

 

 

END

 

 

お題終了。夢・・・というと私は二股大根に追われたことがあります。怖かった・・・orz